鉱石倶楽部

2006年11月19日 読書
ISBN:4167679302 文庫 長野 まゆみ 文藝春秋 ¥700

文庫本ではなく、白泉社版の単行本が、Book Offで100円だったので買ってしまった。ほぼ新品だった。

嫌いながらも好き、という作家が自分の中にあって、長野まゆみはそのうちの一人だと思う。
最初に読んだのは中学の時か高校か。
少年アリスという話だった。

敢えてその感想は書かないが、長野まゆみの作品には主に少年が登場する。逆に少女や女は殆ど出てこないか、たまに現れるのみ(『八月六日上々天気』など)である。

この鉱石倶楽部も少年たちと鉱石の物語である。
全体からは、宮沢賢治の作品へのオマージュというか、その強い影響が感じられる(そういえば、『賢治先生』という本も書いている:宮沢賢治の物語には鉱石が沢山出てくる、彼自身人造宝石商になりたかったそうだ)。

幻想的なお話の間に、美しい鉱石の写真が図鑑のように紹介されているので、好きな人は見ているだけで楽しいと思うかも知れないし、逆にこの量では物足りない、と感じるかも知れない。

何故嫌いながらも好きかというと、
それはあまりにも物語世界に対して意図的過ぎる、
というか「雰囲気を作っている」感じがするからである。

出てくるモチーフ一つひとつが、ある完全な世界の構成ピースとしてまた完全である、という様子が多分気に食わないのだろう。
たまにいらいらすることもある。こんなの、ありえない。
ありえない世界なんて物語なのだから当然なのだが、何故こういう気分になるのか。
色白で美しい顔立ち、洒落た服装、猫、少し毒のあるしゃべり方、考え方でさえも美点になってしまい、決して美的世界を崩していない嘘くささ。

もっとも、それは一方で自分がそういう世界に憧れ、しかもそこには決して届かないことに対する妬みの情なのかも知れず、
その証拠にこうして見つけたら購入し、熱心に読むことには変わりがない。

だから、この本の美しい写真や、清潔な少年たちの話は多分好きである。

長野まゆみは古い仮名遣いや漢字を好んで作品に使っているので、言葉の雰囲気も綺麗だと思う。
ちょっと浮世離れしており、綺麗過ぎるイメージを持たせるけれど、本とは現実とかけはなれているからこそ楽しいものである場合が多い。

他に、クリスティー1冊と倉橋由美子『大人のための残酷童話』を購入。

メモ
How much easier it is to be critical than to be correct.
- Benjamin Disraeli

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