エマ

2007年4月14日 読書
ISBN:4122046432 文庫 阿部 知二 中央公論新社 2006/02 ¥1,500

(最初にアップしたレビューを、若干書き直しました)

言わずと知れた、Austenの作品。
Pride and Prejudiceは何度も読んで非常に面白いと思ったので期待して読んだ。

以下、若干のネタバレあり。

Jane Austenにはよくあるように、舞台はイングランドの片田舎。
20代前半のエマは田舎の裕福な家庭で生まれ育った。他人の恋愛の世話を焼くのが好きである。
一方、エマ自身の恋については、自分で「結婚しない」と決めている。
ただ他人の恋愛の取り持ち役として、人をチェスの駒のように動かそうとするのである。

彼女は自分自身の世の中の見方を時に人に押し付けて振り回し、時にそれを厳しく指摘されて反省する。
そして、至る所で伏線はあったものの、なかなか分からない自分の本心に気づいていく。

・・・といった感じで進行する物語だが、ストーリー自体はあまり面白く思えなかった。寧ろエマの勘違いにイラつくことの方が多かったとも言える。

エマは友人ハリエットに求婚した誠実な農夫を、身分が低い野卑な農民であると決めつけ、ハリエットに「人を身分で判断すること」を吹き込む。その先にある人間性は、エマが最初から悪いフィルターを掛けてみているため、悉く品の無いものとされてしまう。

一言で言えば、得手勝手だ。頭の回転は速いのかもしれないけれど。

そうして、イライラしながらエマの間違っている点を思い浮かべると、それはそっくりそのまま自分に通じるところがあるのでぎょっとさせられる。

隠れた自己中心性、得てして人を身分や見た目で判断する、自分が正しいと思い込む、見えているようで実は周りが見えていない、飽きっぽい―

客観的に見れば自分自身がまたイライラする存在だということに改めて気付かされ、私は自分の悪いところを大いに反省した。

ストーリーの面白さではPride and Prejudiceに劣る気がしたが、それでもやはり古典的傑作は傑作である、と思わされた作品だった。また後になって読み返したら、評価が変わるかもしれない。
原書と翻訳を比べると、昔の社会に根ざした言葉遣いが分かって面白かった。

彼女の作品は、狭い田舎を舞台としていながら、その中の人々の動きと変化によって生き生きとした風景を見せてくれる。
面白い話を書こうとするとどうしても設定を変化に富むものにしなければならない、といった事になりがちであるが、その点でもAustenはすばらしいと思う。

*レビューとは関係ないが、
高慢と偏見、自負と偏見、どちらの訳も自分にはしっくり来ないので、Pride and Prejudiceと呼んでいる。

訳がないといえば、
associationという言葉をテクニカルタームで用いる場合
(例えばplantとmicroorganismのassociation)、
辞書ではまずしっくり来る言葉が無いので、いつも単に「アソシエーション」と呼んでしまう。
皆ほとんど英語交じりの表現で議論するので別に不便は無いけれど、言語は一対一対応じゃないんだなあと実感する。

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