ISBN:4167652056 文庫 乃南 アサ 文藝春秋 2003/11 ¥560

久しぶりのブックレビュー。

この作家の話では、心理描写を通した(特に女性の)本性にどきっとさせられることが多い。
この話も、そんな話の一つでした。

小学校時代の仲良し3人娘が約10年ぶりに再会する。
23歳の今は、全員OL。
3人にはそれぞれ、ちょっと普通ではない性質がある。

スケジュール帳がびっしり埋まっていないと不安な亜理子、
あからさまな虚言癖のある恵美、
何度も手を洗いに行かないと気のすまない梨紗。

3人が小学生のころ、1人のクラスメイトがある日突然失踪する。
彼は男子からイジメを受けており、亜理子ら3人は共同で彼を救おうとしていた。
3人とも彼が好きだったから・・・。

そして、ある約束を交わす。
それを彼女たちはずっと守り続けてきた。
だが、恵美の呼びかけで再び顔を合わせることによって、また過去が引っ張り出され、甦って来る。

・・・

というのがネタバレを避けた紹介になるでしょうか。

夜読み始めたら止まらなくなり、結局一気読みに。

一見普通なような、かつての「少女」たちに、実は狂気が隠されている。その狂気は実に何気なく描写されていて、注意深く読まないとはっきりと分からない。

ラストは物語によくある手法なものの、ひっそりとした怖さを感じさせる。過去が彼女たちを捉えて離さないのか、それとも逆に彼女らの方が(無意識に)しがみついているのか。

彼女たちの狂気を薄めて分かりづらくしたようなものは、結構どの女性の心にもありそうで、怖くなった。
大人になったから打算、嫉妬、値踏み、そんなものが生まれてくるわけでは無く、少女たちの心にも存在する。
「親友」という目に見えない絆で真綿のように締め付け、心では何を考えているのか。
結託が強いために、欲しいものは誰のものにもできない。
それは「ずる」になるからだ。

表面だけを見れば、事件は100字以内で説明できる。
しかし、最後まで本当だったのか分からないこともある。
本気で信じていたからなのか、
それとも無意識的にせよ、それが3人に都合の良い解決策だったからなのか。

読後すぐにはもっと色々考えていたはずなのに、一晩寝たら忘れてしまいました。
現在の話に、過去が時々フラッシュバックのように入り混じる構成になっています。

3人のうち、恵美と梨紗の癖については事件との関連があったのに、亜理子のだけ?です。
もしかしたら書いてあったのに気づかなかったのか?

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